幼児的万能感の大人

最近、大人になっても「幼児的万能感」が消えず周囲や自分を困らせている人が増えています。でも「幼児的万能感」とは何でしょう?ニートやいじめなどの問題との関係は?克服する方法はあるのでしょうか?

ここでは、そんな「幼児的万能感」について考えてみたいと思います。

幼児的万能感とは

「幼児的万能感」とは、文字通り「幼児が感じるような、何でも無限にできるという感覚」のことです。子どもの頃って、あり得ない夢を抱いたりするものじゃないですか? 仮面ライダーになりたいとか、お姫様になるとかw
まあそこまでじゃなくても、スポーツ選手になるとか、アイドルになるとか。
で、本気でそうなれるって思ってましたよね。「幼児的万能感」はそういう感覚のことです。

もちろん夢や目標が大きくても、努力するならいいんです。スポーツ選手とかアイドルなら、めちゃくちゃ頑張ればなれるかもしれませんよね。仮面ライダーは無理ですけどw

なお「何でもできる」という感覚には、

  • 自分自身が何でもできる
  • 周りの人にやらせることで何でもできる

の2種類あります。

「自分が仮面ライダーになれる」と思うパターンと「お父さんなら悪者をやっつけられる」と思うパターンとがあるってゆーことです。

一般に幼児的万能感は3~5歳ぐらいまでに感じる感覚で、発達していくにつれて消えるとされています。

幼児的万能感の特徴

幼児的万能感の特徴を具体的に挙げてみましょう。

  • 何でもできると思っている
  • 自分は悪くないと思っている(人のせいにする)
  • 他者をコントロールできると思っている
  • 失敗しそうになると現実を受け入れられない
  • 何もやらないで可能性をキープする
  • 対等な人間関係を築けない(支配orへつらう)
  • 感情をコントロールできない

ざっと挙げるとこんな感じです。自分は何でもできるので悪いのは周り、できないことがあるはずない、自分はすごいからみんな自分の言うことを聞くってところでしょうか。

あなたは思い当たる節がありますか?身近な誰かを思い出す人もいるかもしれませんね。

幼児的万能感の原因

幼児的万能感がどーして大人になっても残ってしまうのか、主な原因を挙げます。

  • 自分で失敗したり挫折したりした経験がない
  • 周りが思い通りにしてくれたので、周りをコントロールできると思ってしまっている

子どものころは、大人(主に親)が言うことを聞いてくれます。お腹がすいたらご飯を用意してくれるし、毎日服を着替えさせてくれるし。

遊びでも、仮面ライダーごっこで悪者をやってくれるとか、お姫様ごっこで召使をやってくれるとか。仮面ライダーやお姫様の役を親がやることはないですよねw

幼いころはそれでいいんです。子どもは大人に守られて、安心してのびのび過ごせます。

そこから成長していくにつれ、自分でやることが増えていきます。すると実は自分にはできないことがあったり、友達の方が自分より上手だったりするって気づきます。そうやって「自分は何でもできるわけじゃない」と悟っていくんです。

でも変わらず大人が手を焼いてくれちゃうこともあるんですよね。
代わりに宿題やってくれたり、色々買い与えてくれたり。過干渉・過保護ってやつです。

そうなると失敗の経験が乏しかったり、周りは自分のためにいろいろしてくれるのが当然と勘違いしてしまったりして、幼児的万能感を手放す機会をなくしてしまうんです。

幼児的万能感の引き起こす問題

幼児的万能感を持ったまま成長してしまうと、いろいろな問題を引き起こします。年齢の割に幼いところのある「困った人」になってしまうんですよね。

ここでは、幼児的万能感がニートといじめにどのよーに関係するか見てみたいと思います。どっちも、これを読んでいるあなたにも関係あるかもしれませんね…!?

幼児的万能感とニート

大多数とは言いませんが、幼児的万能感がニートの原因になっている場合があります。ニートとは、仕事に就くわけでも学校に通うわけでもない状態の人です。

幼児的万能感のある人は「自分は何でもできる」と思いつつも「失敗しそうになると現実を受け入れられない」ため、むしろ「何もやらないで可能性をキープする」ことになります。

このよーに、幼児的万能感が抜けない人が、何もしなければ失敗もしないからとニートの状態になってしまうパターンがあります。「本気を出せばできるけど今はやっていない」なんて言い訳してみたりしつつ。

また、幼児的万能感がある人は自分の能力を実際より高く見積もっています。そのため、好条件でない限り仕事をやる気がしなかったりします。それで「自分に見合った環境が見つからない」とニートになっているケースもあります。

あるいは勤めてはみたもののうまくいかず、それでも「自分は悪くない」と考えているので周囲や会社のせいにして辞めてしまい、ニートになっている場合もあります。

その他、成人しても親が過干渉・過保護で、何だかんだと理由をつけて自分に依存させるようにしている例もあります。これは本人の責任とは言い切れませんが。

幼児的万能感といじめ

幼児的万能感がいじめの原因になる場合もあります。

幼児的万能感の特徴に「相手をコントロールできると思っている」ことと「対等な人間関係を築けない」ことがありました。

幼児的万能感のある人は自分より立場が上の人にはへつらい、自分より下と感じている人は支配しようとします。

しかし親族の時のように他人をコントロールできるわけがありません。コントロールできなかったとき、その事実を受け入れられずいじめにつながることがあります。

子どもの頃の幼児的万能感はいじめにつながりますが、大人になっても幼児的万能感を持ったままだとモラハラ夫になったりします。

モラハラの場合、相手の献身や謙虚さなどにつけこんで言うことを聞かせているのに、「相手のためにリードしてやってる」みたいに恩着せがましく思ってることもあったりして。

その他、職場でも陰湿ないじめとか割とありますよね。幼児的万能感が大人のいじめの原因になっていることもあります。

幼児的万能感の克服|有能感を手に入れる

大人になるまで消せずに来た幼児的万能感を克服するためには、「有能感」の感覚がカギになります。「有能感」は、経験から得た「やればできる」という感覚です。自分で頑張ってできるようになったことがあれば自信につながりますよね。

ざっくり言うと、克服のためにはまず「何でもできる」と思っている状態から抜け出して、「できることとできないことがある」と思える状態を目指します。

「できるかもしれない」と可能性を残しておくのはよくありません。
「やってみてないから分からないけど、できるかもしれない」という「何もやらないから失敗もしない」状態になってしまいます。

やってみてダメだったと分かる方がいいです。

幼児的万能感に突き動かされていると、それは自分を否定することのように感じるかもしれません。でもそーじゃないんです。「できないこと」は確かにありますが、「できること」もあります。100点ではないですけど、0点ではないんですよ。

それが身の丈に合った認識です。

「これは努力したらできるようになった」と思えれば、子どもっぽい万能感を手放してオトナの有能感を持つことができます。

理屈じゃわかっても、どーしたらいいか分かりませんよねw
では、有能感を手に入れるために具体的にどーしたらいいか見てみましょう。

幼児的万能感を捨てる

次の順番で幼児的万能感にさよならしましょう!

  1. おおもとになっている「ねばならない」「のはず」の意識を把握する
  2. 自分のできること・できないことを理解する
  3. 他人をコントロールしない

まず、無意識のうちに持っている「ねばならない」という考えを見つけましょう。
「誰よりもスポーツができなくてはいけない」とかなら「運動が絡むとちょっとウザい人」ぐらいで済んでそうですけどw、
「どんな問題も解決できる人でなければならない」とか「みんなを正しい方向に導けるリーダーのはず」とかだと、正直めんどくさい人になってる可能性大ですね。

ともかく、まず言動のもとになっている「ねばならない」「のはず」を見つけましょう。

次に(とくに1.で見つけた意識について)、自分にできること・できないことを分けてみましょう。

「サッカーは大得意だけどバスケはイマイチ」とか、
「PCのトラブルは大体解決できるけど恋の悩みは無理」とかw

できない方を自分で認めるのはしんどいかもしれませんが、認めてオッケーです。だってサッカーは得意だったりパソコンには詳しかったりするんですから。得意分野があるってことです。それでいいんです。

分けられたら、できることには自信を持ちましょう。ただし「おれはサッカーの神」とか調子に乗りすぎないようにw

できないことは大げさに受け止め過ぎず、かと言って「バスケなんかできても意味ねー」みたいに過小評価することもなく、何というか、あるがまま・そのままに受け止めましょう。

あと何もしないで可能性だけキープすのはやめましょう。やってみてダメならダメでしょうがないです。「『これは』ダメだった」と思えばいいです。

それができたら、子どもっぽくないオトナの有能感ゲットです。

ここまで来たらもう大丈夫っちゃあ大丈夫ですが、一応あともう1点。
他の人をコントロールしようとするのはやめましょう。
もうそんなことしなくても平常心でいられるメンタルになってるかとは思いますが。

自分に得意・不得意があるように、他の人にも得意・不得意があります。
人の得意だけ見ると嫉妬したくもなりますが、相手もあなたと同じように不得意なことだってあります。

焦らなくても大丈夫です。

初めはちょっと意識して、相手に共感したり感謝したりしましょう。
思うだけでなく言葉にして相手に伝えてみましょう。
むしろコントロールするより色んなことがうまく行くんで驚くと思いますよ。
逆にコントロールする技術として感謝を悪用することのないようにw

幼児的万能感を活かす

幼児的万能感は「自分はできる」というエネルギーにもなりますが、正直デメリットの方が大きくて活かすことは難しいです。やはり活用しようと思うより、解決しようと考えましょう。

活かすためには「自分はできる」という心の中にある気持ちを、行動という外に見える形にしていかなければいけません。でも幼児的万能感のある大人は、失敗しそうになると途中でやめちゃったりするんですよね。なので活かすのはあきらめた方が確実です。

心理学的に見た幼児的万能感

幼児的万能感を心理学の立場から見ると、「自己愛的パーソナリティ障害」と近い(というかイコールじゃね?ってぐらいほとんど同じ)なのがよく分かります。具体的に見てみましょう!

幼児的万能感と自己愛

幼児的万能感が消えていない人は、不安定な自己愛を持っていて成熟した自己愛が持てていません。プライドが高いのに劣等感が強かったりします。あるがままの自分を認められません。

自己愛的パーソナリティ障害と見比べながら、もっと詳しく見てみましょー!

幼児的万能感とパーソナリティ障害

幼児的万能感の強い人は、パーソナリティ障害の中の「自己愛的パーソナリティ障害」と共通する傾向を数多く持っています。

「自己愛的パーソナリティ障害」とは、Wikipedia によると「ありのままの自分を愛することができず、自分は優れていて素晴らしく特別で偉大な存在でなければならないと思い込むパーソナリティ障害の一類型」です。

つまり
できること・できないことが両方ある自分を愛せず、
特別で偉大な存在でなければならない
と思い込む
ということですね。

これは万能だからできないことがないと思ってしまっているし、
「ねばならない」意識があるし、
それは思い込み
ってことです。

確かに幼児的万能感と似ています。

特徴もかなり共通しています。
自己愛的パーソナリティ障害の特徴をまとめてみますね。

  • 自分は特別な存在だと思っている
  • その分他者は小さな存在だと思っている
  • 他者を利用する
  • 人間関係のトラブルが多い
  • 批判や失敗に敏感で、それらを避けることがある

他にもあるんですが、今挙げたことは幼児的万能感と似ています。

自己愛的パーソナリティ障害は、親からの注意や干渉が多過ぎても少な過ぎてもなってしまいます。親があれこれ注意や世話をしすぎてもダメ。逆に無関心だったりロクに叱られなくてもダメ。

ちなみに自己愛的パーソナリティ障害の治療も、根底にある葛藤に焦点を当てたり自分や他者の心の状態を理解したりします。先ほどの克服法でも、おおもとの意識を認識したり、他者への感謝をしたりするって言いましたよね。それと似ています。

幼児的万能感と依存

幼児的万能感のある人は、他者に依存していることが多いです。

「周りを利用することで何でもできる」と思っているなら、自分の代わりに周りの人にやってもらうってことですよね。依存しているわけです。

あと他の人を支配しようとするのも、それによって不完全な自尊心を満たそうとする心の動きです。「自分は自分」と思えず自分の心の問題を自分だけで解決できないので、これもある意味依存です。

またストレスから薬物やアルコール、ギャンブルなどに依存することもあります。

まとめ

幼児的万能感はいろいろな問題を引き起こすので、克服した方がいい感覚です。
そして克服するためには、やっぱり自分の根底とか潜在意識、無意識といった領域を観察する必要があります。

自分も他者もぼちぼちで完璧じゃない、できることもあればできないこともある、って思えるようになれば大丈夫。肩の力抜いていきましょー!